建設業界といえば、「ザ・男の職場」というイメージを持っている人も少なくないでしょう。
実は私も工務店の求人と聞いて、「自分が作ったものが形に残る、やりがいのある仕事だけれど、力仕事が多くて女性には大変そうだな」と、思いました。
そんな固定観念を壊し、「将来的には社員の3分の1は女性にしたい」と意気込むのが、今回ご紹介する株式会社福島工務店。
大野城市と那珂川市に拠点を置き、型枠工事を専門とする会社です。
建築物という「ものづくり」に携われる型枠大工と、資材運搬ドライバー、倉庫作業員の3職種を募集します。
型枠工事はむしろ女性が向いている?
型枠工事とは、鉄筋コンクリート造の建物を建設する際に、コンクリートを流し込む型をつくり、組み立てていく工事。
「僕らが現場に入った時点では、ただ平面的に基礎のコンクリートが打ってあるだけ。その何もないところに僕らが型枠を組み立てていくと、一つの建物のかたちができあがるんです。
何もないところに立ち現れる空間。それを見た時の達成感、やりがい。これは一度味わってみないとわかりません」
と、型枠大工の仕事について熱く語る、代表の森さんが今構想しているのが、『女性の型枠大工のチーム』だ。
「型枠工事には細かな作業がたくさんあります。そして、その精度が建物の出来上がりを左右するんです。丁寧に隅々まで気を遣って作業できる人が多いという点で、むしろ女性の方が向いているのではと僕は思っています」
「力仕事が多そう」というこちらの懸念にも明快に答える。
「近年は材料の軽量化が進み、女性でも持てるような重さになっています。もし体力的に厳しい工程があれば、周りがサポートすればいいんです。確かに、建設現場で活躍している女性はまだまだ少ない。ですが、女性には無理というのは思い込みです」
男性が多い職場で気になるのは、トイレや更衣室だろう。
それもまた思い込みなのだとか。
「工事現場にも事務職や管理職をはじめ、女性が結構いるんですよ。ですから、そういった設備はしっかりと整ってきています」
森さんは、あるゼネコンに、女性だけの型枠大工チームをつくりたいと相談もしたとのこと。
すると、そこの部長も趣旨に賛同し、今後同ゼネコンが携わる工事で女性チームを入れるときは、配慮してくれるという話にまでなっているそうだ。
「準備万端なので、あとは来てもらうだけでいいんです」
では、型枠大工の仕事に向き不向きはあるのだろうか?
「向いてない人はいないんじゃないですか。やる気のない人は向いていないけど、そういう人は応募しないでしょうから。うちで働きたいという方だったら絶対に向いていると思います。しいていうなら、周りと協力し合える人が向いているかな」
「この女性の型枠大工チームは5人くらいで構成したいんです。なぜかというと、現場の進捗は子どもが熱を出したからと言って止められません。ですから、互いの状況を理解しあって、カバーし合いながら仕事を進めてほしいです」
型枠など建築資材のメンテナンスを行う、倉庫作業員のしごと
型枠工事では先述の通り、枠となる資材が使われる。
その枠は、現場に合わせて一つ一つ大きさや形が異なり、その加工も同社にて行う。
その中でも、現場で型枠として使用されたベニヤや桟木をサイズごとに仕分け、整理して棚に収納し、再び使用できるようにするのが倉庫作業員のしごとだ。
「最初は山積だったべニヤが整理されてなくなっていくのは、すごく達成感がありますね」
そう話すのは、人事の福山さん。福山さんは二人の子どもを育てるママで、入社時には倉庫作業の仕事も担当したという。
「業務はそれぞれ担当ごとに決まっていて、まずは一人でもくもくと作業を進めていくので、一人での作業が苦にならない方のほうが向いていると思います。
あとは、倉庫といっても外での作業になるので、外での作業が好きな方ですね」
「仕事が細分化されている分、お子さんがいる方も、急な早退や遅刻もしやすい環境です。
期限までに何かを急いでしなければならないといったこともめったにないですね。」
また、倉庫作業の仕事は幅が広く、パネルに油を塗る作業やフォークリフトでの運搬まで、将来的には、必要な資格を取得して本人の希望に合わせてチャレンジすることも出来るという。
「最初は一人で作業を進めることが多くなりますが、将来的には、倉庫責任者として全体を見渡せる方に来ていただけたらと考えています。
まわりとのコミュニケーションに抵抗のない方に来ていただけると嬉しいです。」
資材を現場へ安全に届ける、トラックドライバーのしごと
では、資材を運搬するドライバーはどのような仕事だろう。
人事部長の山口さんにお話を伺った。
「現在、資材の運搬は6名体制で行っています。基本的な1日の動きとしては、倉庫から資材を積んで、最初の現場へ、そして、また倉庫へ戻って資材を積み、2カ所目の現場へといった動きになります」
「ゆくゆくは、資材を積む為のフォークリフトの免許の取得も念頭に置いていただくといいかなと思います。もちろん、資材の積み下ろしなど力がいる作業は周りのメンバーが手伝いますし、現場は福岡県内のみを想定しています」
最初は、先輩社員とペアで一緒に動くことになる。
どんな人が向いているのだろうか。
「トラックドライバーは安全に物を運ぶことが求められます。運転など気を遣うことも多いのでメンタルコントロールが上手くできる人がいいですね」
チーム制で融通し合う働き方を実現
大野城市郊外にある福島工務店の事務所(※現在は那珂川市へ移転しています)。
入口に飾られたツクシとフキノトウに心なごみつつドアを開けると、「こんにちは!」と明るい声が響いた。
すでにチーム制を取り入れて働いているのが、こちらの事務職の女性社員たちだ。
あとでみんなで写真を撮りましょうと言うと、すかさず「どうしよう、化粧もしてない!」という声が。
日ごろからにぎやかな職場であることがうかがえる。
2024年4月現在、同社の女性社員は10人。
事務職に6人、積算課、人事部には今年それぞれ1人ずつ入社した。そのうち6人が小学生までのお子さんを子育て中とのこと。
その一人である事務を担当する進(しん)さんは、小学生のお子さんを持つママ。
結婚して退職したものの、やっぱり外に出たいと考えるように。お子さんが1歳のときに、ハローワークで見つけた福島工務店に再就職をした。
主に工事に関する書類作成や出勤管理の業務に携わっている。
「近くにこんな会社がありますよと、担当の方が紹介してくださって。父親が建設関係の仕事だったので、なじみもありました」
では、男性の職場というイメージはそれほどなかった?
「会社を訪れる前は多少ありましたが、面接をしてくれた今の上司がすごく明るくアットホームに迎えてくれたので、そんなイメージは吹き飛びました」
「働き方は一応フルタイムではあるけれど、子どもの予定に合わせて振替してもらったり、有給休暇をもらったりというのは結構あります」
「子どもの体調が悪くなって保育園や学校から呼び出しがあるときも、周囲の人が『早く行っておいで』と言ってくれます。こうした環境があるのも、社長が子育てをしながら働くママに対して理解があるからというのが大きいです」
2023年、同社は大きな変化を迎えた。
3月に悲願だった那珂川市内の敷地に本社社屋が完成した。
移転により、進さんをはじめ、以前より通勤時間がかかる社員もいたが、保育園の送り迎えや学童のお迎えに間に合うよう、出退勤の時間は考慮してくれたとのこと。
なぜ女性社員の採用に積極的に取り組み、働き続けられる環境整備を進めているのか。
森さんは、理由をこう話す。
「女性が働きやすい会社は、すべての社員にとって働きやすい会社だと思っています」
家族のように温かく、時に厳しい環境でともに高め合う
「社長である森が自慢です。苦労人で勉強熱心。社員の話に耳を傾け真摯に対応する。社長のことが好きで尊敬している社員は非常に多いです。あなたにもぜひ一度社長とお話しいただきたいと思います」
求人票に山口さんが記した言葉だ。
「見て盗め」という職人から、社員の声に真摯に耳を傾ける経営者へ。
どうしてそのように変わることができたのだろうか。森さんに聞いてみた。
「それは、うちの事務管理部長である石井との出会いがきっかけです。先ほど進が話した、面接した上司ですよ」
石井さんはもともと、福島工務店が仕事をもらっていた土木会社の事務員だったという。最初の出会いは、森さんがまだ駆け出しの型枠大工の頃だ。
「僕が会社を訪れると、いつもすごく優しい笑顔で挨拶して話しかけてくれる。今日はどうしたの?お茶を飲んでいく?って。石井さんは、誰にでも分け隔てなく、愛を与えてくれる人なんです」
人との出会いで、人は変わるということだろうか。
「本当に人だと思っています。人との縁を大切にしていけば、必ずプラスになります。せっかくだから、呼びましょうか」
森さんの呼びかけに応じて、急遽インタビューに加わった石井さん。
勤めていた土木会社が後継者がいないことから解散となったとき、請われて福島工務店に移ってきたそうだ。
「私のほうこそ、社長に育てられたと思っています。そして、私の自慢は、進を採用したことなんですよ。他の事務職メンバーはつながりがあって、この人ならと声をかけて入社してもらったのですが、進だけが面接を受けて入ったんです。本当に採用してよかった」
この人と一緒に仕事ができてよかった、そんな温かな気持ちが飛び交っている。
ただ、持ち前の明るさと優しさで職場を引っ張ってきた石井さんも、あと数年で定年退職を迎える。
「この穴はすごく大きくて、簡単には埋まらない」と森さん。
そのため、新たに2名の事務員を採用。石井さんからも日々学びながら、想いまで引き継げるよう業務を行っているそうだ。
『以心伝心』
先代社長が掲げ、今も同社のフィロソフィーとして大切にしている言葉だ。
所有するトラックにも名刺にも書かれていて、社名よりも浸透していると森さんは言う。
この言葉には、『社員は家族であり、心と心でつながっていけるように』という想いが込められている。
「家族だからこそ、やってはいけないことはきちんと愛情を持って指摘して、もちろんいいことはほめたたえて、ともに高みをめざしていきたい」
何もない場所に型枠を組むと、かたちが立ち上がる。
そんな型枠大工の仕事を愛し、社員を家族のように愛する森さんが掲げた「女性の型枠大工チーム」。
これからどんなかたちが立ち上がっていくのでしょう。
福島工務店は今、「すべての社員にとって働きやすい会社」という理想に向けて一歩ずつ着実に進んでいます。
※倉庫作業員の職種を新たに募集開始しました。