保育園に通っていた幼少期、残っているのは、大半が遊んでいるときの記憶です。
習い事は一切していませんでしたし、塾に通ったこともありません。
今、自分の子どもたちは、保育園を通して、体操や読み書きを学んできました。
自分が5歳の時、数字なんて読めたんだろうか?もちろん、逆立ちなんかできませんでした。
幼児期の教育が将来どう影響してくるのか?改めて一緒に考えてみませんか?
今回、ご紹介するのは、株式会社ファピ。
事業全般に関する事務作業、カフェやイベント運営、保育施設や保育士、学生とのコミュニケーションなど様々な業務に関わって頂くスタッフを募集します。
幼児教室レクルンから始まったファピは、「幼児教育」を軸にその都度向き合う課題をどう解決していったらいいかを考えながら事業を展開しているちょっと面白い会社です。
保育者のためのコミュニティスペース『ぴたカフェ』
福岡市城南区別府。中村学園大学の道を挟んだ向かい側に、一風変わったカフェがあります。ファピが運営する、その名も『ぴたカフェ』。
入口には、「保育者のためのコミュニティスペース」の文字が。
このカフェを利用できるのは、保育を学ぶ学生、保育士、幼稚園教諭だそう。なんと、利用料は無料。
扉を開けるとそこには、壁一面に子どもたちが遊ぶ手作りの知育おもちゃ、絵本や保育施設の資料が並んでいます。奥には、作業ができる工房もあります。
出迎えてくれたのは、スタッフの楠瀬さん。
「工房は保育士の方や学生さんにも好評で、たくさん利用していただいています」
取材に行ったのは平日の午後15時ごろ。
普段は学生さんが大学の授業の合間や学校終わりに来られることが多いそう。
暫く待っていると、代表の平田さんが奥の部屋から出てきた。
素敵な空間ですね。ここは、利用料も飲み物も無料とのことですが、どうやって運営しているんですか?
「ここは、保育施設にスポンサーになってもらって運営しています」
壁や棚に並べられた沢山の資料やパンフレット。それは、このカフェを一緒に運営している保育施設のものだ。
ここには、保育施設の園長先生も来られることがあり、利用者である学生や保育士が直接話をし、その園に就職、なんてこともあるんだとか。
保育施設と学生、保育士の交流の場になっているんですね。
「はい、カフェの名前『ぴた』も『ぴたっとくっつく』の『ぴた』からきています(笑)」
色々なことに興味をもってチャレンジしたい!
今ファピで働いているメンバーは平田さんを含めて8人。
実際に一緒に仕事をすることになるのは、平田さんと社員3名、パート1名、インターンの学生1名と外部のパートナーの方々だ。
最初に案内をしてくれた楠瀬さんにお話を伺った。
楠瀬さんはファピで働き始めて約4年になる、中3と小6の2人の子どもを育てるママだ。現在は、週5日のパートで働いている。
「たまたま勤めていたコンビニが閉店になるとのことで、次の仕事を探していた時に出会ったのがファピでした。どうせなら違う仕事がやりたいなと思って検索していたらここがヒットしたんです」
「名前は“ぴたカフェ”じゃないですか。でも“保育”って書いてあって、カフェで保育?って自分の中でこの2つのワードがつながらなくって、どういうことなんだろう?って。その疑問と好奇心で気になって応募したのがスタートです」
以前は幼稚園教諭として働いていたが出産を機に退職。子どもが1歳になったタイミングでそろそろ働きに出ようと飲食店でパートとして再就職をした。
第二子出産のタイミングでもう一度家庭に入ったが、復職後は幼稚園教諭とは全く別の業種で仕事をしてきた。
ここでの仕事は、事務関係の内容が多い。一方でこれまで幼稚園教諭や接客業を中心にPCを使わない仕事をしてきているが大変ではなかったのだろうか。
「まさに、全く経験のないところだったので、自分自身が苦労しているのはそこですね。いわゆるビジネス系の仕事は無知だったので、一から教えていただいて、未だにですけど、誰からというより、皆さんから教えていただいているという感じです」
楠瀬さんが現在行っている業務は、カフェの運営はもとより、電話対応や園の先生方の来客対応、イベントなどの告知、案内など多岐にわたる。
「ここで働く方は、色んなことをマルチに対応できる人が向いているんじゃないかな?私自身がどちらかというと好奇心が強くて色々興味があって首を突っ込んじゃう方なので、色々なことにトライしたい!という方がいいと思います」
「また、保育業界を活性化したいという想いでみんなやっているので、学生さんが就活に向けて段々変わっていく様子が見れたり、園の先生方とフランクにコミュニケーションをとっている姿を見ると理想的だな、そういう場を提供できてよかったなとやりがいを感じますね」
なにか特別スキルや専門知識が必要とか、こんな人が向いているとかはありますか?
改めて、平田さんにも聞いてみた。
「専門知識は必要ないですが、PCを扱う事務仕事の経験はあったほうがいいですね。あとは、保育施設や保育士さんへのコンタクトはスケジュールを組んでやるので、それをきちんと漏れがなく回せるということが大事かな」
「あとは、保育業界独特なのかもしれませんが、一般企業と比べると『なんで、こんなことにこんなに時間がかかるの?』っていう事も多いので、そこは忍耐力が必要かもしれないですね(笑)。まぁ慣れてくれば大丈夫だと思いますけど」
業界独特の動きや時間軸。最初は戸惑うかもしれないが、そこを「まぁこんなもんか!」と思える柔軟さがあるといいのかもしれない。
働くうえでの課題は一緒に解決していきたい
「基本的に、急ぎでやらなきゃいけない仕事、この人じゃないと絶対ダメな仕事というのは少ないので、急なお休みとかも取っていただいて、もちろん大丈夫です。実際、少人数でやっていますが、どうにかなるよね、と思ってやっています」
創業から9年、『今も会社は課題だらけ、ボロボロだらけです』と笑う平田さん。
社内は、フルタイムで誰かが常駐しているわけではないので、日常の業務も引継ぎの連続だそう。タスク管理ツールを利用して、出勤した時にキャッチアップできるようにしているそうだが、休みの日もスタッフの皆さんが見てしまうとのこと。
「休みの日は見なくていいからねって言ってるんですが、見ちゃうんですよね。なるべくそれをしなくていいように、細かくやってはいますが、中々そこを抜け出せないですね。絶対見るなっていうのは簡単なんですが、それが逆に負担になっちゃうのもいけないんで……」
コミュニケーションに関しても、細かくとるようにはしているそうだが、伝わっていない事も。そんなときは平田さんが間に入っているそう。
「以前は、毎週火曜、金曜は基本全員参加の定例会を開催し、社内での共通認識を取るようにしていましたが、今は、月に一回丸一日全スタッフが事務所で仕事をする日、というのを設けています」
平田さんからは日々模索している様子が伝わってくる。
実際に、事業のアイデアを考えるときには、一緒に働くスタッフやカフェを訪れる学生さんにも積極的に意見を聞くことがあるそう。
「私は、教育の専門家じゃないので、いろんな人の意見を聞きながらやっています。実際に聞いた意見を事業に活かすこともよくあります」
少人数で事業を前に進めていく、とても大変な事だ。だからこそ、1人1人がきちんと意見をだし、考え、進めていく事が大事になってくる。
起業のきっかけは、自分が苦労したから
代表の平田さんは現在38歳。
神奈川出身の平田さんが福岡で起業したのは2014年のこと。
東京の大学を卒業後、みずほ銀行に就職し、その後、教育関係の会社に転職したのち、起業。銀行勤めだった平田さんが幼児教育の会社を起業した一番のきっかけは、自分自身が苦労したという経験があったから。
「高校まで野球をやって、見事に浪人。ギリギリ大学に入って、ギリギリみずほに入れたという感覚が自分の中にあって。当時、同じ配属になった4人の同期は、全員現役で、東大、一ツ橋、京大、早稲田だったんですよ。マジ、エグっみたいな……。本当にきつかったんですよね」
入社1年目。目の当たりにしたのは、東大を卒業した同期との力の差。
「泊り込み研修でのテストで、私なんか毎日復習してやっとギリ平均点。でも、東大の人たちって、本当に酒飲んでても満点近く取ってて……」
「この差は何なんだ?何でこんなに違うんだ?っていうのを目の当たりにしたら、結構しんどいなって……」
その一方で、知識の差も変わらなくなってきた3~4年後には、知識の量に対し営業成績が伴うわけではないという事も分かってきた。
「受験の頭の良さと、仕事ができる、社会で活躍できることがイコールじゃないんじゃないかって思ったんです」
営業という仕事を習得する速さ、難しいことにチャレンジすることが苦にならない、それは、自分が野球、運動を通して学んだことなのではと感じた平田さん。
「運動によって得られる知的な部分がもしあるのなら、それを『幼児教育』に取り入れたらもっと楽しいだろうなって思ったんです」
そこから幼児教育に関する企業に転職。
しかし、いざ入ってみると、フランチャイズ展開をメインに推進している企業ばかりで、教育の中身の事を全然考えていないと感じた。
「だったら、自分でやるか、元の業界に戻るかの二択でしたね。自分でやるとしても、人とお金が必要になってくる。半年粘って、何とか両方を探して起業しました」
福岡で起業。スタートした幼児教室で見えてきたものとは
福岡で起業したのは、銀行員時代の赴任先や転職先も福岡にあったこと、そして、平田さんがやりたい幼児教育が出来る場なのでは、と思ったことも大きいとか。
「やりたい教育が受験の文脈ではないもう少し素敵なものを模索できないかな?となった時に、首都圏だとどうしても受験に引っ張られちゃうんじゃないかっていうのがあって。多少そこの可能性があるのが、地方都市である福岡じゃないかなっていうのはありましたね」
最初は福岡市中央区にある幼児教室レクルン。
まずは、自分たちで直接子どもたちに学びの機会をという事で始めた。
やがて見えてきたのは、都内と比べるとやはり、想定していたほど教育熱が高くないということ。これでは、教育を前面に打ち出しても響かないし、伝わらないと分かった。ただ学びを提供するだけでなく、授業後の講師との対話の時間等を交えるなど、継続して通ってもらえるよう工夫していったそう。
教室の運営から始まったファピが保育施設や保育士に関わる事業を展開しているのは、そういった課題の解決に加え、世の中の動きも関係しているのだとか。
「教育は教室でやるのが直接、子どもにも親にも届けられるという点では一番よかったんですけど、共働きの家庭も増え、保育園や幼稚園に通わせている家庭も多いので、今は保育園、幼稚園を通じた方向に事業をシフトしています」
すると、そこにはさらに沢山の課題があることが分かった。
保育士の人材紹介事業への挑戦
保育士不足、離職率の高さ。
そういった情報を目にすることも少なくない。
子どもたちに保育施設を通して学びの場を提供したいと思っていても、場となる施設、教える側の保育士がイキイキと働ける環境が整っていない事には、それを実現するのは難しい。そこで、始めたのが保育士の人材紹介事業だ。
「これから一番力を入れたいと考えています」とのこと。
世の中にはたくさんの人材紹介がありますが、ファピの仕組みは少し違う。
「独自に開発した保育士のエンゲージ管理ツールを保育施設に導入して園長先生に管理してもらう。そうして離職を防ぐ一方で、どうしても離職しないといけなくなった保育士には、別の園を紹介できないかと考えました」
しかし数か月運用をして、ある課題が見えてきた。
「エンゲージ管理ツールは保育士の方にはすごく使っていただけて、アラートが出ているぞとかよく分かるんですが、施設側がうまく活用できていないという問題が出てきました。だから、今はこのツールを使って別のアプローチを考えています」
「もう、ほんと、日々なんで?どうして?ってことの連続です。超えるべき壁がおおきいから、やりがいはすごくありますよ。というか、やりがいしかないですね(笑)」
最後に、気になる質問をしてみました。
『ファピ』という社名の由来って何ですか?
「あ~、これは『ファミリー ハピネス』略して『ファピ』です。もちろん、色々調べてこれにしたんですけどね(笑)」
幼児教室レクルンは『レクリエーション ルンルン』
ぴたカフェは保育施設と保育士、学生が『ぴたっとくっつく』
何ともまっすぐ、そして、あったかい。
実現したいことをまっすぐ素直に、そして柔軟に変えながら挑戦を続けていく平田さんと一緒に“おっきい壁”を越えてみたい人は、ぜひ、ぴたカフェをのぞいてみてくだい。
※撮影時はマスクを外していただきました。