小さい頃の夢叶え美容師に
仕事が好きだからこそ
自分も周りもたいせつに

「自分らしく働きたい」という思いはあっても、子育てや介護など、様々な理由で仕事に割ける時間が限られ、選択肢が少ないと感じている方も多いと思います。
他の誰かの「働き方」を知ることは、自分らしく働くための選択肢を増やすヒントになるかもしれません。
この記事が、あなたの背中を押すきっかけになればいいなと願っています。

お話を聞かせてくれた方

高橋 佳珠 さん

30代。小学3年生と1年生の男の子2人を子育て中。
専門学校を卒業後、小さい頃からの夢だった美容師になる。関東で3年間勤務後、地元福岡に戻ることを決意。
結婚し、出産を機に一度退職。第一子が1歳2カ月の時に元同僚に誘われ復職した。途中第二子を出産し産休に入りつつ、パートで約7年半勤務後、自分の心境と仕事環境を見つめ直し、2023年1月から現在の店舗へ。
お客様一人ひとりと丁寧に向き合うことを大事にしながら週4日勤務で働いている。

子育てしながら「働く」ことを選んだ理由は?

 主婦になって1年くらい経った頃に、なんかお金ないな、と思って。生活水準を下げるか働くか、となった時に、やっぱり働きたいなと。

でもちょっと考えたんです。一回辞めたし、子育ても楽しかったから。
私意外と主婦も向いてんじゃん?って。働かずに主婦でやっていこうか、とか、今までの職種と全然関係ない、例えばスーパーとかでパートしながらでも良いかなと思ったこともあるんです。

でも、待ってくれているお客様がいる、せっかく今まで働いてきたスキルもある、何より「また一緒に働こう」と自分を誘ってくれて、必要としてくれる場がある。それを考えると、やっぱり働きたいな、と。そしていざ復職してみたら、もう仕事なしでは考えられなくなりました。

一度退職されてから育児中の復職。重視した点を教えてください。

上の子を妊娠した当時、美容業界では産休・育休の制度が整っているところが少なく、私も一度退職しているんです。

なので、復職の際には「働きやすさ」を一番重視しました。

オーナーが知り合いだったこともあり、勤務形態について多少融通を利かせてもらえたというところも選んだ理由の一つです。その店舗は、スタッフ数が多く価格もリーズナブルでお客様が割と流動的だったこともあり、指名さえ入ってなければ休んでも差支えはなかったんです。周りにお子さんがいるスタッフもいたので、子育てしながら働く状況を理解してもらえていました。

その長年勤められた場を離れ、現在の店舗に移ろうと思ったきっかけを教えてください。

前の店舗では、とにかく忙しくて。脳と体をフル回転させてうわーっと切羽詰まってしまうこともあるくらい、体力的には厳しかったんです。

後々、お客様に「あの頃は大変そうな顔してたよ」と言われたこともあります(笑)。休みは取りやすかったし働いた分だけお金は貰えてた。けれど「身を削ってまで働くべきなのか」と下の子が小学校に上がるタイミングで自分の仕事の仕方を見つめ直したんです。

目の前の仕事を次々とこなしてバタバタと働いていたけど、私が提供したいのは、そういうんじゃない。もっと一人ひとりに時間をかけて、お客様にゆったりした時間を過ごしてほしい。そのような接客が出来る職場に変わりたいなと思ったのがきっかけでした。

お子さんが生まれる前と後では「働く」ことに対する想いや考え方は変わりましたか?

子どもが生まれる前は、分からないことは自分で調べたいし、講習に参加したりして自分自身でちゃんと理解し消化したい思いが強かったんです。

でも、復職してからはブランクがある分、新しいことは聞かないと分からない。自分で知識を取りに行く時間もない。仕事に対して分からない事はとりあえず何でも人に聞く、ということを恐れなくなりました。

みんなが作っているスタイルを「あれいいわ、どうやってるんだろう」と見たり、カラーが素敵だったら「何を使ったの?」って。

割とプライドが高い方なんですけど、いまや周りは殆ど後輩ですが、プライドなんて捨てて、何でも聞いちゃってます。

働いていて大変なことは?またどう乗り越えていますか?

仕事中は常に頭を働かせているからか、家に帰ると廃人のようになることもあって(笑)。
家のことが思うように出来ないことですね。

そんな時はあれもこれもやらなきゃと思わずに、出来ない!と思ったら、やらない。無理せず出来る時にしようと諦めています(笑)。例えばもし仕事で何かあった時は、今日はご飯を作るのをやめよう!とか、その日は家庭で無理をしないとか。

夫には「そんなに大変なら仕事もっと減らしたら?」と言われることもありますが、仕事中は自分に向き合って熱中出来るから、それって子育ての息抜きにもなるんですよね。

仕事を減らしたら精神的にもっとキツくなっちゃう。私は仕事の時間が楽しいから、家庭も頑張れる。それだけこの仕事が好きなんです。

働いていて、やりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?

やっぱり、お客様に喜んでいただけることが一番です。

美容師ってお客様の「来てよかった」「任せてよかった」って喜んでくださってる気持ちがダイレクトに分かる仕事。

美容室で過ごす2~3時間で、その人のその先1カ月がちょっと豊かになる。それを提供出来るっていうのがとても嬉しい。また、お客様の人生の節目にも関われて、綺麗にするお手伝いも出来ることにもやりがいを感じます。

私が美容師になった理由でもありますね。

働き始めたことで家族の関係性は変わりましたか?

義実家が近いのですが、義母には「1歳になるまでは家に居た方が良いんじゃない?」と言われていました。1歳になる前に保育園に預けて働こうかと考えていた時期もあったんです。お客様を待たせているし悩みました。

でも、年長者の言うことは聞いておくべきかなと。結果、そのお陰で良いタイミングで前の職場に出会えたし、今、例えば朝急に子どもが熱を出しても快く預かってもらえたりするのは、その時のことがベースになって今の体制があるのだなと。

最近は義母も髪を切りに来てくれます。気を遣う関係だったのが、何でも言い合える仲になってきた感じがして良好な関係が築けている。仕事をしている私を見てもらえて、より理解が深まった気がするのは、あの時、自分の想いだけでなく義母の意見に耳を傾けたお陰でもあるのかなって少し思っています。

最後に、働くママへのメッセージをお願いします。

子どもが3歳になるまでは親と一緒にいた方が良いと良く耳にします。
意見は色々あるとは思いますが、子どもが小さい頃から働くことで、大変なことばかりじゃなくプラスの面もたくさんあると思うんです。
会えない時間がある分、子どもからも刺激を受けるし、仕事をしている背中を見せるっていうのは、別に父親に限ったことではなく、母親の背中を見せても良い。子ども自身も働くお母さんの姿を見て、将来に繋がることってきっとたくさんあるから。

働きたいという気持ちがあるのであれば、頼れるものには頼って働いた方が後悔はないし、子どもが将来、「自分がいたからお母さん働けなかったんだ」って思っちゃうのは可哀想。子育て、家庭のことは、みんなで協力していけば良い。私は、あの頃頑張ったから今があるって思えています。

編集後記

お客様に対し自然体で居心地の良い時間と美を提供する高橋さん。実は私の担当美容師さん。
私が高橋さんに出会ったのは数年前。その人柄と技術に惹かれ、新しい店舗へ移られても、追いかけてずっと担当していただいています。
会話する中で感じていた仕事に対する姿勢や子育てに肩肘張らない姿が、働くママやこれから働きたい人への参考になるのではと今回インタビューをお願いしました。

お子さんが小さい頃は「がむしゃらだったことしか記憶がない」と笑いながら話される飾らない姿に、自ずと好感と共感が湧いてきます。周りとの関係は段階を経て焦らずに、でも自分のやりたいことは着実に追及してきたからこそ、高橋さんの今があるんだなと思いました。

取材・執筆

彌登慶子
福岡在住17年。2女1男の母。随時変化する子育ての悩みに奮闘しながら、自分以外の人の為にも生きることの大変さ、尊さ、有り難さを日々学んでいる。心踊るのは、未知の世界の話を聞いて、知る事。アロマセラピストとして産後女性の心身サポートにも携わっている。