人と直接かかわることが好きだから
接客やカスタマーサポートを経て
社員を支えるバックオフィス業務へ

「自分らしく働きたい」という思いはあっても、子育てや介護など、様々な理由で仕事に割ける時間が限られ、選択肢が少ないと感じている方も多いと思います。
他の誰かの「働き方」を知ることは、自分らしく働くための選択肢を増やすヒントになるかもしれません。
この記事が、あなたの背中を押すきっかけになればいいなと願っています。

お話を聞かせてくれた方

高原 みはる さん

40代。中学3年生、小学6年生の男の子の子育て中。
新卒で宮古島のリゾートホテルに入社。
その後福岡に戻り、外資系のホテルに入社。フロント業務・ベルマン業務を行う。
退社後に結婚・第一子を出産。1年半の主婦期間の後、近くのホテルのレストランでアルバイトとして働く。その後、第二子出産のタイミングでまた一度仕事を離れる。第二子が1歳になったタイミングで、接客のアルバイトに従事。
その後、現在勤務している会社の通販などを行う事業部にパートとして入社。現在は正社員として労務人事管理・経理のほか、オフィスの庶務としての役割も担う。

経歴を拝見して、接客業など「人と直接かかわる」お仕事をされてきた印象がありますが、何か理由があれば教えてください。

高校卒業して初めてのアルバイトがドーナツ屋さんでの対面接客だったんですが、それがすごく楽しくて。
直接お客様とお話したり、「あの人困っているかも」「声をかけてみよう」と行動することが昔から好きで、自然にできる人になりたいなといつも思っています。

上のお子さんが一歳半ごろに再就職されたとのことですが、何がきっかけでしたか?

私自身がもともと外に出たい人なんです。
子どもはもちろん好きだけど、自分のことも大事にしたいなと思っていて。それに、保育園に行けばお友達と触れ合うことで成長できたり、いろいろなことを学べるじゃないですか。自分と二人っきりだと限度があるし、かわいそうな気もしてしまって。

もちろん、ママと離れて寂しい思いもするかもしれないですが、できることが増えるし、きっと楽しい時間を過ごせるので、子どもにとっても私にとってもいいだろうなと。どこか、自分にそれを言い聞かせながら働いていたっていうところもあるかもしれませんが。

接客のアルバイトをやめて、現在のお仕事を選ばれたきっかけは?

アルバイト勤務当時は多いときで週に3回、一日5時間しかシフトに入れませんでした。やっぱり働くんだったら生活も豊かにしたいですし、兄弟2人分の保育料となると、なかなか希望の収入額に見合った働き方ができなくて。

腰を据えて働ける場所は無いかと求人情報誌を見ていたところ、「子どもの病気等、急なお休みにも対応」「ママに優しい環境」というワードに惹かれ、今の会社に就職しました。

現在の会社では、どんなお仕事をされていますか?

会社が通販をやっているので、入社当初はお客様からのお問い合わせに対応するカスタマー業務を行っていました。今年で勤続10年目になるんですが、その業務が一番長かったですね。
他にはラジオ配信をしたり、インスタライブを行ったりと、お客様から直接「商品を使って良かった」とか、「楽になりました」といった声を聞くことのできるポジションにいたいなという思いで仕事をしていました。

現在の仕事は、労務人事管理・経理・オフィスの庶務のようなものや、そのほか出来る事ならなんでも行うといった、いわゆる「何でも屋さん」といった感じです。

カスタマーサービスでお客さんの声を聞くという業務から、バックオフィス業務へ。接客が大好きな高原さんにとって物足りなさを感じることはないですか?

逆にカスタマーサービスをしていた時の方が、物足りなさというかウズウズしてたんですよね。ネット通販なので、お客様とは電話やメールでしかお話しすることができなくって。
『やっぱり私は、直接お客様の顔を見ながら話をしたい!』という想いがずっとありました。でも、ネット通販という性質上、オフラインイベントを開催するなどしない限りは叶わなかったんです。なので、そこは自分の中で区切りをつけた部分ではあります。

そこからは「私は楽しく仕事をしたいし、やりがいをもっていたいと常に思っている。その気持ちを、今、うちの会社で働いているみんなが思ってくれたら最高だね!」みたいな感じに方向転換したというか。なので、カスタマー業務も現在の役割もどちらもすごく好きです。

高原さんの会社での役割などを教えてください。

オフィスにはいろんな事業部があるんですが、働いているメンバーには20代の若者もいれば、私のようにその子たちのお母さん位の年齢の人もいます。
自分で事業を立ち上げようとしている人、通販の商品を出荷する人など業務もさまざま。みんな業務の推進に一生懸命なんです。だから、なかなか働く環境を整えるという視点を持つ余裕がなくって。

例えば、ご飯を食べているときに、「ここはたくさんの人が使う場所なんだから、黙食しなきゃいけないよ?」って言う役割というか。誰かがやらなきゃいけない事を私がやっている感じです。
うるさいおばちゃんみたいな存在かもしれないですが、少しでもみんなが安心して働ける環境が作れたらよいなと思っています。

仕事をしていて、やりがいを感じる瞬間はありますか?

会社って、いろんな人がいるんです。特性を持ってる人だったり、性格や年齢も一人ひとり違うし、家族構成も違う様々な人がいて、同じ場所で1日7~8時間一緒に過ごしていますよね。簡単にはいかないかもしれませんが、せっかくなら皆が気持ちよく過ごしてほしいと考えています。

メンバーから、「ここで働けてよかった」とか「ここにいるみんなのために頑張ろう」というような声や雰囲気を少しでも感じられる瞬間があると、すごくうれしくなります。

まだまだスタートしたてではあるんですが、「ここで働けて良かった」という気持ちを広げていけるようなことができたら、もっとやりがいを感じられるのではないかなと思っています。

子育て中の仕事の乗り切り方やコツなどがあれば教えてください。

例えば子どもがいての在宅勤務で、子どもから声をかけられ続けたり、業務を進めるのが難しいという状況になったときに、「今の状況だと仕事が進まないので、ちょっと休憩時間長くいただきます!」みたいに、はっきりと伝えるというのは大事だと思います。

良かれと思って気を使って言わなかったり、言い方を変えてしまうと変に伝わってしまって、誤解が生じたりもするんじゃないかと思うんです。なので素直に伝えることってすごく大事なんじゃないかなって思います。

それと、周りから助けられることも多いと思うので、感謝の気持ちをきちんと伝える事と、他のスタッフさんが大変な時には、逆に助けてあげる気持ちを持つことも必要だなと、ママが多い職場だからこそ感じています。

働き始めて、パートナーや家族に変化はありましたか?

もともとは、主人も仕事で遅かったし、私自身も家事に対して協力してほしいという気持ちがあまりなかったんですが、やはりきつくなることもありました。

そんな中、仕事で海外に行く機会があって、毎年一週間くらい私が家にいないという状況が発生したんです。他にも、私が体調崩してしまった時期もあり、その時は主人が家事を担当してくれました。子ども達もお皿を洗ったり、ご飯を炊くなどといった家事を少しずつ主人から仕込まれて、サポートしてくれるようになったんです。

それまでは、ご飯を炊くことって私か主人だけしかできないと思っていたんですが、子どもがご飯を炊けるようになった時は「ああ、幸せ~!」ってすごくうれしかったのを覚えています。

最後に、これから働きたいママに向けてメッセージをお願いします。

結婚・出産後の働き方って、それ以前の働き方とは絶対違うと思うんです。環境も違うし、自分のことを中心にして働けない。
やっていけるかな?大丈夫かな?って心配にもなるとは思うんですが、子どもに対しても自分に対しても、気負わないで欲しいなって思います。

私自身、子どもと離れて働いて、自分の時間を少しでも持つことによって、「ああやっぱり私って、こんなに子どものことが好きだったんだ」って思えたし。子どもは子どもで、たくさんの友達の中でいろいろなことを学んだり経験して、保育園などで楽く過ごす時間もできるわけなので、お互いに良い環境に向かっていけるんじゃないかなって思ったりしています。

なので、心配しすぎないでほしいなとお伝えしたいです。

編集後記

一緒に働く人が、どうやったら気持ちよく働けるのかを考えて業務を行っている高原さん。時には嫌われ役も買ってでなければいけない場面もあるかと思います。しかし、一緒に働くメンバーの方々に愛を持って接するその姿は、まさにみんなの「お母さん」。
母親としてお子さんに接してこられたご経験が生きている瞬間だなと感じました。

さらに、接客やカスタマサポート業務で培われた、「相手の立場に立って寄り添いながら、相手が求めているものをキャッチして行動する力」が、バックオフィス業務を行う際に魅力的な強みとして生きているのだなと感じています。

子育てで磨かれたスキルとこれまでのご経験を生かして、新たな分野でご活躍されている高原さんのお話を聞き、新しいことにチャレンジしたいけど、自分の経験が生かせるかどうかわからないと迷っていらっしゃる方がいたら、ぜひ、ご自身のご経験を「職種」や「業務内容」だけではないところで振り返ってみてほしいなと思いました。きっと、あなただけの強みが見つかるはずです。

取材・執筆

十時育子
1986年生まれ、福島県出身。24歳で第一子を出産後、7年の主婦生活を経て再就職した経験から、同じように「働きたい」と考える方の助けになりたいと入社。SNS発信やライティングを担当。 小5小2男子、年長女子の母。毎週のニチアサが一番の楽しみ。