子育て中に起業し17年
ゼロから前進しつづけ
歩みを止めないセラピスト

「自分らしく働きたい」という思いはあっても、子育てや介護など、様々な理由で仕事に割ける時間が限られ、選択肢が少ないと感じている方も多いと思います。
他の誰かの「働き方」を知ることは、自分らしく働くための選択肢を増やすヒントになるかもしれません。
この記事が、あなたの背中を押すきっかけになればいいなと願っています。

お話を聞かせてくれた方

岡本 亜由美 さん

40代。22歳と高校3年生の女の子二人の母。
短大卒業後、化粧品会社に入社。退職後、起業を視野に化粧品の卸委託業務やお弁当屋を営みながらフリーで活動。
結婚し、妊娠中にリンパセラピスト等の資格を取得。子育ての傍らアロマセラピストとして女性の体をケアするプライベートサロンを経営。アロマとリンパトリートメントケア、ベビーマッサージや助産学校の講師などを務めると同時に、2019年から福岡市内の産婦人科で産前・産後の方のケアに特化したエステサロンも営んでいる。

サロン経営に至るまでの経緯を教えてください。

もともと美容系の仕事が好きで。化粧品会社に勤めていた時は、商品をディスプレイし、いかにお客様の目を引くお店作りが出来るかで自分の思いを表現していたのですが、実際にそれを手にするお客様とは間接的にしか関われなかったんです。

すごく楽しかったけど、「直接お客様と話したい」っていうのがずっと私の中にありました。

どうやったら自分の想いが叶えられる仕事ができるんだろうと模索していた時に偶然アロマセラピーと出会い、心と体の健康や生活に役立つ面があるのにも大きな魅力を感じて、のめり込んでいきました。ちょうど長女がお腹にいた時です。

妊娠中にアロマスクールに通って色々資格を取り、ずっとやりたかった「直接お客様と関われる仕事」で起業しようと決めたんです。

「体をケア」する美容の仕事と、癒しの要素が強いアロマ。二つを融合して、同時に「心のケア」もしていくような、トータルで人を癒す仕事がしたいと思ってサロンを開きました。

子ども向けのアロマセラピーも教えられていますね。

大人の女性向けにアロマセラピーを学んで起業への道を進もうとしていたとき、当時赤ちゃんだった長女の夜泣きが止まず、全く寝てくれないっていう日々が続いたんです。
何か方法がないかと途方に暮れていた時に今度はベビーマッサージと出会ったんですね。

近くで開催されていた講座で学んでみて、実際長女にマッサージを施してみたら大分落ち着いてきたので、すごく良いなと。

悩んだ分気持ちが分かるし、これはぜひ夜泣きで困っているお母さん達に教えてあげたいと思い、今度は次女妊娠中に子供向けのアロマセラピーを勉強しました。

2人のお子さんを妊娠中に、着実に準備をされたんですね。

そうですね。長女を妊娠中に通ったアロマスクールの先生には、「一切そちらにはご迷惑をかけません。教えてもらえる範囲で構いません。」と言って、臨月までずっと勉強させてもらいました。

ボディの実技だけは、「何かあっては困るからやめて」と言われたので(笑)、産後に習いに行きました。

もともと、産後は子どもを保育園に預けて働けばスムーズにいくというのが私の頭の中にはあったんですが、当時の私は考えが甘かったですね。実際出産してみるとそうはいかない。

寝られないし病気はするしで全く予測がつかない世界で、仕事はもう出来ないんじゃないかと思う時もありました。

経営の知識もない中どうしたら上手くいくのかを考え、子どもが寝ている時間に勉強し、起きている時間は子どもと過ごすことを意識。
常にメモ帳を持ち歩いて、公園で遊ばせながら合間に勉強なんかもしていましたね。

ゼロから起業し、軌道に乗せていく過程で原動力になったものとは?

当時は自宅の一部をサロンにしていました。
看板もないところで、一人でゼロからのスタート。最初はもちろんボチボチでした。

でも、一人でもお客様が来て頂けたなら良かったと思い、宣伝にも力を入れつつ、一人ひとりのお客様に丁寧に向き合いました。

そのうちに、通って下さるお客様が出来て、紹介までして下さる方もいて。
ずっとやりたかった「お客様と直接話せる仕事がしたい」という思いも叶って、こんなことある?って感謝の気持ちしかありませんでした。

直接お体に触れることで伝わるものがあるし、帰られる時に皆さんお顔が違うんです。

「あー良かった、これでまた頑張れる」って言って下さる。
お客様からの嬉しい言霊シャワーを浴びるような感覚もあり、毎回毎回お客様にパワーを頂いています。そこが今でも原動力になっていますね。

子育てしながらの起業について周りからの反応は?

もともと両親が自営業で、育った環境がそうだったからか、自分もいつか起業したいと思っていました。子育てをしながら起業をすることに全く迷いはなかったです。

ただ周りからは、子育て中にするものじゃないって言われたこともありました。

両親も子守りでは協力はしてくれましたが、「フェイシャルエステで肌トラブルがあって訴えられたらどうするの」とか、そういう心配はあったようです。「子どもが小さいから今じゃなくて落ち着いてからにしたら?」って。

でも私は、そんなんじゃ遅いっていう気持ちが強くて。
今。今しかない!と思っていました。時間は限られるし自分も年を取っていくので、早い方が良い、と。

不安なことはありませんでしたか?

起業すると全責任は自分にあるので、もちろん大変なこともありますが、子ども中心に仕事の調整をすれば良いので不安に思うことはなかったです。

お母さんがやりたいことを仕事にしていれば、子どもにも多分良い影響がいくんじゃないかなって今でも思います。

美容のお仕事というのは、人を綺麗にするだけでなく、自分自身も癒される。すごく幸せな仕事だなっていつも思っています。

毎日お仕事があるっていう有難さも痛感しています。
今では手伝ってくれるスタッフさんもいて、こんなことが出来ると思ってなかったので、本当に有難いです。

いつも大事に持ち歩いているという、お子様が小さい頃のお写真

働くうえで悩みや大変なことはありましたか?

やはり突然の子どもの体調不良ですね。

私は実家がわりと近かったので、母に早めに予定を聞いて、予測が出来る範囲でスケジュールを組んでいました。
それでも、どうしようもない時もありましたが、お客様には日頃からご理解を頂けるよう、小さい子どもがいることは周知していました。

今は、子どもも大きいので、そういう大変さはありませんが、自分自身はなかなか休めないですね。
自営業は自由であるようで、自分次第でいくらでも仕事が出来てしまう、終わりがないっていうのがありますから。

それから特に産婦人科での仕事に携わっていると、出産状況は予測がつかないので、休みは取りにくくなっていますね。

休めない中で、どう息抜きしていますか

予約が急にキャンセルになった時や、休める目処が立った時には、その時に集中して子ども達と旅行することで息抜きしていました。

子ども達が大きくなった今は、自分の時間が出来ると車で一人日帰り温泉に行ったり、近場で美味しいものを食べて帰ってきたりしています。

最近バイクの免許を取得したのですが、それもリフレッシュになりました。
今していることと違った世界にちょっと身を置くことが好きなんです。新しい刺激があり、脳が活性化されるから老化防止にもなりますし。
そのうち気晴らしにバイクで温泉にでもプラッと行けたら良いなと思っています。

忙しい中でスキルアップの時間は設けていますか?

まとめて時間を取ろうと思うとやっぱり難しいのですが、何にもしない日がないように、日々の歯磨きのような感覚で、必ず1日1回は精油事典やテキストを開いています。

通勤時間が長いので、昔から車の中では喋りながら何かしら覚えたりと、隙間時間を活用しています。

人一倍、時間を大事にしてこられたんですね。
最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。

子育て大変なこともあるけど、やりたいことがあるなら、諦めないでもらいたい。頑張ってほしいなって思います。
理解してくれる人は必ず一人二人います。話し合いをして、理解してもらい、やりたいことはやった方が良い。

皆を照らす太陽のような存在のお母さんがイキイキしている姿を見ることで、子どもにも良い影響を与えると思います。

また、起業をお考えの方には、苦労と思うか否かは自分次第なので、何事も前に進む為のステップと思って、失敗を恐れずにチャレンジしてほしいと思います


編集後記

責任感が強く、常に周りへの感謝の気持ちを忘れない、またそれをしっかりと伝えていく謙虚な姿勢は、周りを明るく前向きにし、岡本さんと関わる人達の気持ちに大きく影響します。

癒しを求めるだけでなく、この人に会いたい、話を聞いてもらいたいと思うお客様も多いのではないでしょうか。

ゼロから自分で道を開き、多忙な中で果敢に新しい事にもチャレンジしている岡本さん。自分の足で凛と立つその姿の背後には、時間を無駄にせずやってきた多大な努力がはっきりと見えました。


取材・執筆

彌登慶子
福岡在住17年。2女1男の母。随時変化する子育ての悩みに奮闘しながら、自分以外の人の為にも生きることの大変さ、尊さ、有り難さを日々学んでいる。心踊るのは、未知の世界の話を聞いて、知る事。アロマセラピストとして産後女性の心身サポートにも携わっている。