「人に対する投資を続けてきた」
そう話すのは株式会社アステックペイントの常務、今村さん。
アステックペイントは外壁などに使われる塗料を製造、販売するメーカーです。
ただ単に、“売る”という事だけでは終わらせない。塗料業界をけん引するメーカーになるため、様々な新しい取り組みを行っています。
そこに関わる“人”。社員はどんな想いで働いているのでしょうか?
福岡空港から歩いて10分ほど、大きなインディアンのイラストとASTECの文字が描かれた建物。
そこが、アステックペイントの本社です。
「NO FUN NO WORK」
同社の社屋入り口には、こんな言葉が書かれた色鮮やかな壁画があります。
こちらをバックに、今回お話を伺う常務取締役の今村さん、経営管理部人事部主任の山田さん、経営管理部総務課の菊竹さん、3人の写真を撮ることにしました。
うん、みんなとてもいい笑顔。
そんな同社で今回募集している職種は、営業事務・受注窓口の一般事務。
「業務としては、営業担当者のサポートとして電話対応や集計などを行っていただく予定です」
ただ、営業事務などの一般事務だけでなくもっとクリエイティブな人材もほしいと考えている、と今村さん。
「プログラマーをしていたとか、ホームページを作成していたとか……。今まで培ってきた業務経験を、当社で活かせないということはないでしょう。また、インサイドセールスができる人は特に歓迎します」
インサイドセールスは、ウェブでつないで顧客に情報発信や営業をしていくスタイル。その仕組みはすでに社内で確立されているとのこと。時間に制約があるママもトライしやすいかもしれない。
一般事務以外の業務でチャレンジしたいという方は、是非相談してみてほしい。
育休復帰率は100%!若手もママもリフレッシュできる制度とは
そんな、多職種で活躍できるアステックペイントでは育休からの復帰率が100%なんだそう。
「復職するのが当たり前という雰囲気がありますね」と、二児のママである菊竹さん。
「今、小学生未満の子どもを持つママが10人弱いて、それを若い世代が見ている。子どもを育てながら働くことに対するイメージトレーニングができているんでしょうね」
子育て中も働きやすい雰囲気があるんですね。では、制度はいかがでしょう。
「中途採用の方からよく驚かれるのが、リフレッシュ休暇です。3年目からは10連休を取れるんですよ」と人事部の山田さん。
今はコロナ禍で難しいが、若手社員はこのリフレッシュ休暇を利用して海外旅行をする人も多い。
そして、ママである菊竹さんは……
「毎日子どもを見送って出迎えるという幸せを感じる期間ですね。10日間が終わった後にまた仕事を頑張ろうと思えます」
「子どもが体調を崩した時も休みやすい企業風土があり、その理由の一つがリフレッシュ休暇なんですよね。子どもがいない社員でもどこか抜ける時期が必ずありますから。業務を属人化しないという目的もリフレッシュ休暇にはあり、そこに私達ママも一緒に乗っかるような感じです」
有給休暇の強制取得という面もあるリフレッシュ休暇が、ママにとっても助かる制度となっているようだ。
ブランクなんて、子どもがいる事なんて気にしない。見ているのは「その人自身」
では、ママの再就職に関するよくある悩み事、ブランクについてはどうでしょうか。
この質問に今村さんは即答した。
「ブランクなんて全然気にしません。子どもがいるいないも関係ありません。もし仕事中に子どもが熱を出したらと気にされるママさんもいるでしょう。確かに子どもは熱を出すこともあるけれど、普段働いている時にそれは関係ありません。熱が出た瞬間に変わるだけ。今のその人の働きを見るだけでいいんですよ」
その人の背景ではなく、その人自身の能力や意欲に目を向けているということなんですね。
今村さんは続ける。
「時短勤務も希望に応じて認めています。ただ、これは仕方のないことですが、時短勤務の場合は、より能力を見ます。7時間勤務なら7時間でパフォーマンスを発揮できるのか、多少面接のハードルは上がると思います。逆に『ママだから給料はここまででいいでしょう』といったこともしません」
「私が面接を受けたときも、『会社に来て仕事に集中してくれたらそれでいい』と言われたんですよ」
菊竹さんは第一子を出産後、アステックペイントに入社したとのこと。派遣社員からのスタートだった。
「前職は結婚して辞めました。当時は『寿退社』や『専業主婦』に憧れていたんです。26歳で第一子を出産しましたが、ふと友達のSNSを見るとみんなバリバリ働いていて……どこか取り残されたような気持ちになり、再就職を考えました」
「ですが、子どもがいるからいつ休むかわからないということで、正社員で受けたところは全滅しました。そこで派遣の登録会場に行ったところ、『融通の利く会社がありますよ』と紹介されたのが、ここです。後で今村から『お母さんを雇ってみたかった』と聞きました」
お母さんを雇ってみたかったと?
「はい、雇ってみたかった。だって、今いる社員の中から、お母さんになる人も出てくるじゃないですか。当時、乳幼児を育てながら働いている人が社内にまだいませんでした。そういった働き方に対応できるかどうか、実際にやってみないと分からないでしょう。で、雇ってみたら問題なくできました」
「子どもは適度に風邪を引いて、ときどき早く帰っているなあと。すると、『こういう時はどうするんですか』と若い社員が相談するようになり、菊竹が回答してくれる。ありがたいことに『こんなにいい環境の会社はないよ』と言ってくれるんです。中途入社の彼女が言うから、若手も納得するんですよね」
正社員になりたい!その想いを後押しする給与制度とは
菊竹さんは3カ月間派遣社員として勤務した後に契約社員になり、その1年半後に正社員の登用試験を受けた。その理由についてこう話してくれた。
「契約社員だと時給なので、ゴールデンウィークや年末年始は給料が下がってしまいます。それに、まだ仕事もできない新入社員でも、私より給料をもらっていたんですよね。これは正社員になるしかないなと」
菊竹さんのストレートな発言に、横で聞いている今村さんも笑っている。
「生々しくていいね。これ書いておいて」
「夫からは絶対にここを辞めるなと言われています。半期に1回目標を設定して、それを達成できると給与が上がる制度があるからです」
この制度について、山田さんが説明してくれた。
「所属部署全体での目標や自分の将来を見据えてやりたいこと、それを達成するための手立ても含めて『チャレンジシート』に記入します。そして、半年後に『目標管理結果報告シート』を記入します。目標の達成度が、次の期の給与に反映されるんです。給与テーブルも全部公開しているので、結果報告シートを書き終わった瞬間に、次の期の自分の給料が分かるようになっています」
それは、明快なシステムですね。
「中途で入った一般事務の社員がたまに驚くんですよ。『給料が半年ごとに上がるんですか?営業だけじゃないんですか?』って」
「チャレンジシートを記入するのは大変ですが、書いて結果を出したら給料が上がるので、全社員が目標を決めるという企業文化が出来上がっています」
ここを改善したらもっとスムーズに業務が進むのにと思っても、周りの目が気になって言い出せなかったり、提案したとしても受け流されたり、そんな経験を持つ人も少なからずいるのではないだろうか。それが、アステックペイントでは、改善に取り組むことがダイレクトに評価に結び付き、自分自身の成長にもつながる。一人ひとりがモチベーション高く働いている様子がうかがえる。
ただ、裏を返すと、指示されたことだけをやればいいという考えの人は、合わないのかもしれない。
「そうでしょうね。入社しても辛いと思います」と、今村さん。
「以前社長が言っていたのは、『ベストな環境を提供するからベストを尽くしてほしい』と。当社の人事ポリシーの一つが、仮に当社がなくなっても、もしくは当社を卒業したとしても、明日からでも独り立ちできる人を育てることです。そして、そういう人材が辞めない会社づくりをしていきたいですね」
創業から22年、業績は右肩上がり。その要因とは
2000年に建築用塗料メーカー「アステックペイントオーストラリア」の日本総代理店として創業した同社。その後、自社でも商品を開発する塗料メーカーへと発展していき、業績は右肩上がりを続けている。
その要因はどこにあるのだろうか。
「2010年から新卒の定期採用を始めて、人に対しての投資をずっと続けてきました。そこから伸びていったのではないでしょうか」と今村さん。
「特に、ここ最近で大きく伸びた一番の要因は、『塗装業界のThe Everything Store』という会社のビジョンを明確にしたからでしょう。一人ひとりがこのビジョンを理解した上で、自分がやるべきことは何かを考えられる集団となりつつあります。あれこれ細かい指示は必要ない次元に入っていますね」
『塗装業界のThe Everything Store』って、おもしろい言葉ですね。もう少し教えてください。
「言うなれば『塗装業界のAmazon』ですね。
Amazonは本屋から出発して、今では世界の『The Everything Store』となりました。我々は塗料メーカーなので、塗装業の課題解決のため、ポータルサイトや現場管理アプリを作ったり、フランチャイズ組織を立ち上げたり、職人さんのマッチングをやったり、様々な取り組みを行っています」
「塗料とITを掛け合わせた企業ですから、職種はすごく広がっています。建物を守るために塗料がどれだけ重要かをアピールして、業界に革命を起こしたいですね」
塗装の重要さですか?
「塗料は建物を守る重要な役割を果たしているんですよ。皆さんはご自宅にどんな塗料が使われているかご存じでしょうか?」
「一生にそう何度もない大きな買い物であるマイホームなのに、それを守る塗料の種類を知らないのは問題だと思っています。それを打破するのが我々の使命であり、塗装業界に対する貢献です。将来的には、新築のハウスメーカーがアステックの塗料を使っていることを強みにしてもらえたら面白いですね」
今まで深く考えたことがありませんでしたが、家の大きな面積を占める壁の質の良し悪しって確かに重要ですよね。
インタビューを終えて、帰り際にもう一度壁画を見ました。
「NO FUN NO WORK」
仲間とともに目標に向かって成長すること。
大変なこともあるかもしれないけれど、その道のりを楽しめるなら、きっと彩りにあふれた毎日となるに違いありません。
※撮影時はマスクを外していただきました。